エチオピア買い付け珍道中#3
珍道中エチオピア編#3。
どうも、シュハリの福島です。
エチオピア買い付け#1と#2は読んでいただけましたでしょうか。最終章#3は前回のブログに引き続きCOQUA社について。#1と#2がまだの方はそちらをご覧いただくと、今回の内容も読み進めやすいかと思いますのでぜひとも。
最終章はモアタ氏と共に巡り、出会った生産者や生産現場について書いていきます。
- モアタ氏と巡り出会ってきた生産者-
・Guji, Banko Michicha
「Banchayehu Geremo」
・Gedeb, Halo Beriti
「Birhanu Dido Awacho」
「Nigusse Jilo Dima」
「Aregash Gelcha」
「Bekele Beyene」
・Gedeb, Worka Sakaro
「Mengeshe Gumi」
・Sidama, Bensa, Murago / Haro / Ejersa
「Bekele Kechara」
・Sidama, Bensa, Bombe
「Bekele Basha」
・Sidama, Bensa, Hora Genet
「Bekele Belachow」
・Sidama, Bensa, Dembi
「Bekele Yutute」
・Sidama, Bensa, Murago
「Nigusse Nare」
・Sidama, Bensa, Bombe / Shantawene
「Melesse Wolde」
・Sidama, Bensa, Keramo
「Mate Matios」
・Sidama,Arbegona, Gemecho
「Tadesse Yonka」
今までももちろん目にしてきた、キャリアの中で使用してきたロット(W.S)が生産されている現場にも行きましたが、農場を持っていて自身のチェリーをしっかりと自身のロットとして生産している「生産者」にこんなにも会えるのは正直圧巻でした。
その中から数人ピックアップしていきます。
・Guji, Banko Michicha
【Banchayehu Geremo】

今回モアタ氏と一番最初に訪れた女性の生産者で、彼女は主にW.Sの管理をしています。そして彼女の旦那さんと家族が農園を管理しているのですが、もちろん近隣の農家さんたちのチェリーも買い取りコーヒーを生産しています。W.S近くにある農園にも案内してくれました。
基本的にエチオピアではバナナなどでシェードが作られていますが、いわゆる山岳部の自然環境の中でコーヒーが自生しているようなイメージです。赤土で粒子が細かく、表面は乾燥している見た目でしたが、シェードや落ち葉がしっかりと土に水分を留め、そのまま落ち葉が土へ還り分解されてミネラルや窒素などが溶け込み、農薬などを一切使用していない自然の循環の中で土壌が健康に保たれています。彼らもこの説明をしながら、化学物質が入っていない、自然体で健康な土地と木々だと言っていて、やはり土(土地)の力が強いということを話していました。
W.Sには川が流れ滝があり、潤沢な水源からウォッシュドを生産する環境に恵まれていました。実際にカップをとったウォッシュドはスーパーフレッシュでしたが、レモニーでスパイシー、ジャスミンのニュアンスを感じる綺麗なコーヒーで、現地の段階ではピックアップしたロットの一つです。
ちょうど近隣の農家さんがチェリーを持ち込み売買している現場にも立ち会いました。
こちらのウェアハウスは木枠にアルミ板で建てられ、とても天井が高く清潔に保たれていました。

農園での一コマ

豊かな水源に恵まれたW.Sのほとりにある滝

チェリーの売買をしにくる小規模農家の家族

それぞれの農家との売買記録
ウェアハウスは木枠にアルミ板、天井に通気口
・Gedeb, Halo Beriti
【Birhanu Dido Awacho】
【Nigusse Jilo Dima】
【Bekele Beyene】
【Aregash Gelcha】

日本でも多くのロースターさんが使用しているGedebにあるHalo村。
今回の訪問ではHaloのバイイングポイント(小さなドライングステーションもありました)で上記の生産者に会うことができました。
モアタ氏いわく、ここのエリアのチェリーは非常に糖度が高く、カスカラなどを食べても甘くて美味しいと言っていました。COQUA社自体も、このHaloエリアの小規模農家さんと仕事がスタートしたのはここ1年くらいだそうで、これからどのような透明性の高いロットが出てくるのか楽しみです。
近くにそれぞれのエクスポーターのウェットミルがあり、そのエクスポーターがこのバイイングポイントで買い取り場(日本でいう簡易的な屋台のような)を構え、小規模農家さんからチェリーを買っているそう。
また、輸出するにあたってアディスアベバまでコーヒーを運ぶのですが、ナチュラルはそのまま運ぶと体積が大きく重量が重いため、近場にある簡易的なドライミルで一回
パーチメントにしてからアディスアベバまで運送するそうです。
このバイイングポイントにあったウェアハウスは竹を編んだ床に、土壁、天井はアルミの板という空間になっていました。言ってしまえば本当に日本の古い土蔵のような様子。湿気もなく、冷涼に保たれていました。外気との温度差に驚きました。

Birhanu Dido Awacho氏

Nigusse Jilo Dima氏

左:Bekele Beyene氏

左の温かい眼差しを向けている人物がAregash Gelcha氏

バイイングポイントにある小さなウェアハウス。土壁、アルミ板の天井
・Gedeb, Worka Sakaro
【Mengeshe Gumi】

日本だと目なじみ耳なじみがある方が多いWorka Sakaro。
今回訪れたメンゲシェ氏のドライングステーションは、モアタ氏とのコミュニケーションの密度やメンゲシェ氏の品質向上にフォーカスする丁寧な仕事と意欲を感じました。
スロードライに効果的なメッシュの網で囲われたアフリカンベッドと、通常の直射日光にあてるアフリカンベッド。直射日光側のアフリカンベッドの底にはメッシュの網を敷き、温度の過度な上昇を防ぐように網にチェリーを包めておく時間を作り(そうすることで包まれたチェリーの内部は温度が上がらない)、それを適宜撹拌しながらドライイングをコントロールしていきます。乾燥の前半と後半で直射日光に当てる期間やスロードライを促す期間をコントロールし、シェルフライフや発酵フレーバーの寄与に対するアプローチを色々と試していました。この取り組みは今年から始めたそうで、アップデートのスピード感と貪欲さがすごいなと感じましたし、スピード感がある中でもきちんと管理されていたのでカップをとるのが楽しみだなという印象を持ちました。
とても勤勉で真面目な姿勢の息子さんも生産に参加していて、その光景がこれからここのコーヒーは世代を繋いでより良くなっていくのだろうなと想像していました。
ウェアハウスは木と竹を編みこんだ冊で壁が作られ、天井はアルミ板。通気性が高く密閉されていない造りになっていました。
後日カッピングテーブルに並んだナチュラルロットはクオリティ良好で綺麗なナチュラルプロセスのコーヒーに仕上がっていたので、現地でピックアップしたロットの一つです。

メッシュの網で囲われたアフリカンベッド:この網の有無で直射日光が与える温度の影響が大きく変わる

チェリーをネットに包んでいる様子(手前):直射日光とチェリーを包む乾燥をコントロール。内部温度は低く保たれていました。

ウェアハウスは通気性に優れた木枠のみでの造り。天井はアルミ板。
・Sidama, Bensa, Murago / Haro / Ejersa
【Bekele Kechara】

エチオピアでは数多くのベケレ氏と会ってきましたが、今回の紹介はこのベケレ・ケチャラ氏を。
Ejersaにある彼のドライングステーションに伺ってきました。MuragoとHaroとEjersaに農地があり、それぞれのエリアのチェリーを別々にロットを分けて生産しています。
このステーションではナチュラルとアナエロビックの発酵を経たナチュラルの2種類が乾燥台に置かれていました。見晴らしの良い高標高の高台にあるステーションで、
前回ブログのAyla Bombeのように、ゆるやかな斜面にアフリカンベッドが建てられ、風通しが良い場所でした。メッシュの網で囲われているアフリカンベッドと、網が敷かれたベッドの2タイプがあり、訪れた時にはアナエロビックのロットが網で囲われているベッドに置かれていました。乾燥段階では、どこのD.Sもきちんとスロードライされているアナエロビックのコーヒーは酢酸系の少し刺すような香りが穏やかでまとまりがあり、逆にワイルドな香りになっているところとの差が明確で、これもドライングを含めたプロセスの妙がそれぞれのステーションであるなと感じました。
そして「Halo」ではなく「Haro」。Haroは標高2400mあたりに位置しており、今年は4Bagほどの生産になるそう。やはり標高の高いエリアのチェリーは身が引き締まり、豆のスクリーンも小さく、KokoseやBombeなどといったエリアのコーヒーもそうですが、豆面がかわってきますね。
ウェアハウスは木枠にアルミの板で壁から天井まで作られていましたが、壁の下部に通気口を作っていて、豆が入った袋を置く場所は床にべた置きではなく少し高さを出して空気が通るように工夫がされていました。
こちらのHaroのナチュラルロットは現地の段階ではカッピングで異彩を放っていたのでピックアップしました。

高台に位置するドライングステーション
ウェアハウスは木枠にアルミ板:豆を地面に直置きせずに高さを作り通気性良く
etc...
- COQUA社とDry Mill -
Aga Dry Mill
そしてCOQUA社が通しているDry Millのことも少し。
これまで紹介してきた生産者のコーヒーは、「Aga Dry Mill」を通して輸出されます。
COQUA社は例外を除いて、取引のある生産者のコーヒーの約90%をこのミルを通して輸出しています。
Aga Dry Millはアディスアベバから南東に車で約1時間ほどのAkakiという工業地帯のエリアにあります。
建設されてからは比較的新しく、まだ建設途中のカッピングルームやオフィスなどもあり完成はしていませんでしたが、規模は大きく、とても清潔に保たれていました。
導入されている機器類は中国製の最新のものがチョイスされていて、その操作盤なども1か所に集約されていたり、選別中に出る大きな騒音を減らすために各マシンのエンジンや動力は地面に埋めたりコンクリートの壁の中にまとめる工夫もされています。
また、ベルトコンベアを多く導入した限りなくオートメーション化されたシステムは、働く人への負担を無くすためのことだと聞き、労働環境への配慮もありました。話しの中で、カラーソーターが高性能で特にカメラの性能が高く、豆を感知できる面が多いため、全方面から感知して細かく振り分けることができるそう。そして特に面白かったのが、ウォッシュドとナチュラルのプログラムはもちろん違いますが、同じプロセスでもグジやイルガチェフェなどのエリアによってもカラーのプログラムを細かく分けているとのこと。その土地特有のカラーがあるのは納得だし、面白い話しの一つでした。
今回のAga Dry Millの案内人はもともとTesti社のドライミルでも数年働いていた経歴があり、そうした経験値もこの現場では生きているのだろうなと思いましたし、このドライミルでも理にかなった動線の作りこみと、整理整頓され清潔に保たれた施設内、そして確かな設備投資とそれが可能にしていく確かなクオリティへの担保を感じる素晴らしいドライミル視察になりました。

電源の操作盤

カラーソーター

アライバルのストレージエリア
そして、COQUA社と過ごす最終日でのカッピングセッションでは、出会ってきた生産者のロットが並び、テロワールでの味わいの違いが明確なのはもちろん、各生産者での味わいの傾向が感じられたのはエチオピアコーヒーを目の前にして初めての経験でした。
エチオピアコーヒーで「それぞれの生産者の味」が把握できるということ。
セッション中も「〇〇(人物名)の味だね」なんていう会話も生まれ、新しいソーシングの可能性を感じるセッションの時間が流れていました。

お湯を注ぐアンシャ氏とモアタ氏

COQUAオフィスにて:同じ生産者でのエリア違いやプロセス違いのロットが多数並んだカップ
今回のエチオピアでの買い付けを振り返ると、Testi社とCOQUA社という異なる2つのエクスポーターと時間を共にできたことが、とても大きな意味を持っていたと感じています。
初回のブログで書いたTesti社は、規模感、資金力、設備投資、そして一貫したオペレーションによって、毎年安定したクオリティとボリュームを市場へ届ける力を持ったエクスポーターです。ウォッシングステーションからドライミル、ウェアハウスから輸出まで、品質を下支えするための構造が1社でしっかりと整えられていて、高い水準で維持し続けている点に、エチオピア屈指のエクスポーターとしての強さを感じました。日本のシビアなスペシャルティマーケットにとって、その安定性がどれだけ重要な価値であるかは言うまでもありません。
一方で、COQUA社と過ごした時間は、自身の今までのエチオピアコーヒーの概念とはまた別の側面を見せてくれました。品質評価を起点に、生産者一人ひとりの仕事や背景、土地の違いに深く踏み込んでいく姿勢。実際に農園やステーションを回り、生産者の名前が記載されたロットがカッピングテーブルに並ぶ光景を見ていると、これまで大枠で捉えていた「エチオピアコーヒー」が、明確な個性を持った集合体として見えてくると共に、透明性がもたらす味わいの解像度が格段にアップデートされたように思います。
大量流通を可能にする構造があるからこそ、多くの人にエチオピアのコーヒーが届き、その中でCOQUA社のような動きがあるからこそ、生産者単位での価値や新しいソーシングの可能性が生まれていく。今回この2社を続けて訪れ、現場を見て、話を聞き、生産物に向き合えたことで、そのどちらもが噛み合いながらエチオピアのコーヒー産業が前に進んでいるんだなというふうに思っています。

Bensaの生産者たち
まだすべての買い付けロットは決まっていませんが、今季のエチオピアのソーシングには新しい可能性を感じています。
南米や中米でのフラッグシップ生産者がいるように、日本の皆さんにエチオピアコーヒーでもトレーサブルでサスティナブルな色の濃度を高めたご提案と、毎年安定したクオリティの買い付け、そしてエチオピアでのフラッグシップ生産者との出会いの橋渡しもしていけるように、引き続きあまり珍がない道中を進んでいきたいと思います。
p.s.
個人的な珍はアワッサのホテルのエレベーターに30分間閉じ込められた事と、アディスのホテルのATMにクレジットカードを吸い込まれて1日出てこなかったこと。
福島

