エチオピア買い付け珍道中#1
シュハリの福島です。
1月の初旬からエチオピアへ2週間買い付けに行ってきました。
今季の買い付けでは、各社の管理するウォッシングステーションやドライングステーションの視察、新しく取引を始めるサプライヤーCOQUA社とのコンタクトと買い付け、昨年からのアップデートに重心を置き、各セクションにおいてのクオリティへの相関性とエチオピアの新しいソーシングの可能性を探しに。
シュハリとしてエチオピアは昨年から初めて買い付けをスタートしたオリジンです。
昨年の初買い付けではサプライヤーを3社回り、主に買い付けのカッピングとTesti社のドライミルの視察をしてきました。
今回のブログではTesti社について書いていきます。

-Testi coffee (Testi Trading PLC) -
エチオピア初年度、とあるご縁が巡りにめぐりこのTesti社との取引がスタートすることになりました。
Testi coffee は2009年に Faysel Abdosh Yonis(ファイセル・アブドシュ・ヨニス) がアディスアベバで設立した家族経営のエクスポーターです。社名のTestiは、現地で喜びや幸福を意味するそうで、生産者にも消費者にも幸福を届けたいという理念を持って経営をしています。(ちなみに、ファイセル氏の次男の名前がTesti。)
もともと彼はコーヒー農家の家庭に生まれて育ち、幼少期からコーヒーがとても身近にある生活だったそう。Testi社を立ち上げてからのちにアメリカで教育を受けた甥をマーケティングに迎えて、ECX(エチオピア商品取引所)やAFCA(アフリカファインコーヒー協会)、ECEA(エチオピアコーヒー輸出業者協会)など複数の団体にも加盟し、国際市場での信頼性も高めていっているエチオピア屈指の規模を誇るエクスポーターの一つでもあります。
自社のウォッシングステーションや管理するドライングステーション、設備の整った大規模なドライミルを所有していて、原料調達から乾燥・精製・輸出までを一貫管理する体制が整っているのも安定したクオリティのコーヒーが輸出できる強みの一つと感じています。
昨年も訪れてなにより目に留まったのが、ウェアハウスの湿気を逃がすための設備があったこと。中南米などいくつかドライミルを回った中でもこの設備があるミルは初めてでした。3階建てになっているドライミルは動線がしっかりと作りこまれていてオペレーションにも無理がなく、しっかりと整理整頓され清潔に保たれています。今年はカラーソーターをCIMBRIAの最新のものに入れ替えていて、よりソーティングの制度があがったと昨年からアップデートされていた点がありました。また、これからドライミルの近くに新たに約3倍の広さのウェアハウスを建設準備中で潤沢なストックルームが確保される予定。
- 社会貢献とコミュニティ支援(Project Direct) -
Testi社の特徴として、農家コミュニティの生活水準向上と持続可能性の強化を目的とした取組みで、「Project Direct」 と名付けられた社会貢献プログラムがあり、これは教育支援やインフラ整備に特化していて、Guji、Yirgacheffe、Sidama、West Arsi など複数の地域で、小学校の建設と運営支援を実施しています。今回のトリップでは実際にSidamaエリアの学校へ立ち寄り、そこでは約2000人の生徒が通っているとのことでした。また、優秀な学生への奨学金提供なども行い、それにより将来の地域リーダー育成にも寄与しているとのこと。
また、今回は実際に体感することは出来なかったのですが、インフラの整備においても山岳部などの遠隔地ではまだ限定的な電力や給水についてコミュニティ単位でインフラ整備支援を行い、農家の生活の質向上に直結する取り組みを進めているそうです。

立ち寄ったSidamaの学校
- Testi社の管理するウォッシングステーション -
・ Faysel Abdosh Washing Station
・ Ayla Shantawane Washing Station
・ Ayla Bombe Washing Station
・ Adorsi Washing Station
・ Gara Sole Washing Station
・ Gara Gena Washing Station
・ Jigesa Washing Station
etc..
今回の買い付けでは、TESTI社が管理・所有するウォッシングステーションやドライングステーションにも行き、どのような環境下で生産されているのかを視察してきました。上記に挙げた以外にも管理しているステーションは複数ありますが、昨年買い付けたMulishやAyla Bombe、JigesaのロットはこのTesti社から輸入しています。
※MulishはJigesa W.Sのプレミアムラインのロットとして名付けられているロット名
いくつかピックアップしていきます。
【Faysel Abdosh Washing Station】
代表のファイセル氏の名が冠されたW.S。ハンベラの標高2150m前後に位置するW.S。
ここではウォッシュドとナチュラル、アナエロビックの発酵を経たロットを処理していました。
今後はダークルームでのドライングにもトライするとのことで、暗室になるように設計施工途中のコンクリートで固められた建物があったりと、設備投資に力を入れている様子。乾燥を終えたコーヒーが保管されるウェアハウスは天井が高く、壁の上方には小窓がいくつも設置されていて内部にこもった熱を自然に逃がす構造になっており、日中13~14時くらいでしたが庫内はかなり冷涼に保たれていました。
敷地内に簡易的なオフィスルームなども設けており、自身の名を冠するだけあってプレミアムラインのロットの生産にもしっかりと力を入れているW.Sの一つ。(実際に昨年のカッピングでもこのW.Sのプレミアムラインのロットが並び良いクオリティだった記憶があります)
ステーションで働く従業員には日本円で約300円(日給)の支払い。今回Testi社の管理ステーションでヒヤリングした場所はどこもこの金額での労働でした。
※アディスで働く人々の平均月収が日本円で約2万5千円~3万円、W.Sのマネージャーや手放したくない人材も同額程度。

建設中のダークルーム用の暗室
【Adorsi Washing Station】
海外ないし日本でもArichaと表記したり、Aricha Adorsiと表記するコーヒーショップもあるW.S。
管理者はTofic氏。こちらのW.Sで目についたのはインフューズドのロットを乾燥させていたところ。
「HONEY WITH TENADAM」「HONEY WITH PINEAPPLE & PREME STRAWBERRY」「HONEY WITH CINNAMON」等、約15種類前後のインフューズドハニー精製のロットがアフリカンベッドに乗っていました。個人的なキャリアの中でもこのW.Sのナチュラルには数年触れてきて、純粋にトラディショナルなプロセスだけで良い素材感を感じていたので、このプロセスがどんなインパクトを持つのか、今後エチオピアコーヒーにどんな影響を与えていくのか動向が気になります。ウェアハウスは木の枠組みにアルミ製の板が張られ、こちらでも壁上部に隙間を作る工夫が。アフリカンベッドの上には黒いシートを覆い、急速な乾燥にならないように日陰を作っていました。

乾燥中のインフューズドロット
【Ayla Bombe】
昨年買い付けたAyla Bombe。ベンサの標高2200m前後に位置。
上記BombeとShantaweneはBensaにある村の名前です。非常に標高が高い場所にある村で、近年ではこの村近辺のチェリーはブランド化されつつあり高値で売買されています。昨年もエチオピアのコーヒーに色々な場面で沢山触れてきましたが、Bombeのロットは良好な傾向だなと感じていました。
ここは見晴らしがよい高台にあるD.Sで標高も高く、ゆるやかな斜面にアフリカンベッドが建てられ、非常に風通しが良くナチュラルのD.Sとして良い条件がそろっている印象を受けました。乾燥をスタートさせた4日前後は直射日光にあて撹拌させながら狙いの水分値まで下げ、そこからは日中の陽が強くなる時間帯はシートをかぶせたり、シートにくるんで熱を持ちすぎることを防ぎゆっくりとドライングさせていく。これにより荒々しいワイルドな発酵フレーバーが付きすぎず、スロードライングはシェルフライフにも良い影響を与えていく。
なんといってもこのW.Sの管理者のアババ氏が真面目な柔らい雰囲気に優しい顔つきでとても心地よく、ものづくりは人柄が出るな、と買い付けた1年越しに点が線でつながった感覚でした。こちらのウェアハウスもコンクリート、壁上部には通気口、冷涼に保たれていました。

左:ファイセル氏、右:アババ氏

Ayla Bombeの保管庫
今回Testi社と訪れたドライングステーションやウォッシングステーションのつくりは、どこも大きくは変わらず、竹で組まれたアフリカンベッドに、ブラックの網状のシート。天井の高いウェアハウスは、アルミ板かコンクリートで建てられており、中に入ると日中でも外気とは違う冷涼な空気。もちろんそういった場所だけではなく、木、土、草、藁で作られた茅葺屋根のトゥクル(エチオピアの伝統的な円形の家)で保管している場所もありましたが、比較的新しいウェアハウスでは、壁の上部に通気口が設けられていて、内部にこもった熱が自然に抜けるよう工夫されていたりと小さな改良ですが、乾燥後の保管環境を考えれば、確実に品質へ影響してくるポイントとしてこうした小さな改善を重ねている姿勢が、エチオピアの現場を少しずつ前に進めているのだなと感じました。
Testi社の大きな強みの一つは、やはりその資金力と規模感、設備投資の確かさにあると思います。
ドライミルの規模、動線の整理、一貫した品質管理。そのどれもがボトムの高いところで整っていてオペレーションには無理がない。
その結果として、ボリュームのあるロットを毎年安定したクオリティで輸出までもってこれる点。
これはそう簡単なことではないと思うと同時に、日本のシビアなスペシャルティのマーケットにとっては非常に大きな価値の一つだと思っています。

上部に見える銀のダクトが除湿機能のある配管 - フロア全体に通っている

ドライミルに乾燥済みの豆が運び込まれる様子

アップデートされたソーター

最終は10~20人で手選別。※昨年2月の様子

昨年の2月に訪れた際の様子 - 新しくできるウェアハウスにより更に整理された環境へ
次号はCOQUA社編へ